アジサイ眼科


アジサイ眼科

Ajisai Ophthalmology Clinic

糖尿病による網膜血管閉塞

今回の投稿の大概の参考文献は文光堂の眼科学です。
日本眼科学会認定眼科専門医なら誰でも持っているであろう本です。
最初に言っておきますが、正しい眼科の知識を持っている医学生でも知っている話をします。

>糖尿病網膜症の病態は、①網膜血管の透過性亢進、②網膜血管の内腔閉塞、③血管新生


②の網膜血管の内腔閉塞について主に取り上げて書きます。


>糖尿病により、微小血栓が形成され、毛細血管領域、細静脈、細動脈が閉塞、内腔は周囲から侵入したグリア細胞によって埋め尽くされ、不可逆性の血管閉塞となる。
蛍光眼底造影を行うと、血管閉塞領域に一致して造影剤の充盈欠損や無灌流領域がみられる。
血管腔形成の可逆性を有する段階では、閉塞部の再疎通もみられる。
血管閉塞により網膜は虚血となり、血管新生の原因となる。


>増殖前糖尿病網膜症について
>軟性白斑:前毛細血管細動脈閉塞による限局性網膜乏血(神経線維層における軸索流の停滞、途絶)を示す所見である


糖尿病網膜症に限りませんが、軟性白斑は血管閉塞のサインで、血管閉塞に伴う網膜出血や軟性白斑は年単位で経過とともに消えますが、網膜神経線維層が萎縮することが多く、バンド上の神経線維層の欠損(NFLD)が見られたり、その場合OCTでNFLD部は本当に神経線維層が無いことが認められます。


何が言いたいかというと、糖尿病網膜症による網膜出血、硬性白斑、軟性白斑が消えたところで、元通りの網膜に戻ったと思わない方が良いということです。
不可逆性の血管閉塞が起こっていれば、数年後、数十年後に新生血管による硝子体出血、血管新生緑内障で見えなくなったり、最悪は失明することがあるよ!ということです。


じゃぁどうすれば良いかというと、内科で良好な血糖管理、定期的に眼科で検査用の点眼薬を使用して散瞳下で眼底検査、必要に応じて蛍光眼底造影、治療をする、当たり前なスタンダードな治療計画を立てることです。


ただ、眼科としては、血糖さえ管理出来れば何でも良いという極端な食事療法は止めてもらいたいです。
眼科は動脈硬化による血管閉塞に気を付けなければいけない診療科の一つです。
簡単に言っても、内頸動脈、総頸動脈、眼動脈、網膜静脈、網膜動脈の閉塞によって突然見えなくなるからです。

上記サイトより、
>2013年秋にアメリカ心臓病関係の学会であるACC/AHAが、生活改善のためのガイドライン「心血管疾患リスク低減のための生活習慣マネジメントのガイドライン」を発表した[2]。そこで、「コレステロール摂取量を減らして血中コレステロール値が低下するかどうか判定する証拠が数字として出せないことからコレステロールの摂取制限を設けない」との見解が出された。2015年2月に米国農務省USDAから一般国民向けに発表されたガイドライン作成委員会レポート[3]において、ACC/AHA同様、食事中コレステロールの摂取と血中コレステロールの間に明らかな関連を示すエビデンスがないことから、これまで推奨していたコレステロール摂取制限を無くすことが記載された。
>動脈硬化を防ぐには、高LDLコレステロール血症だけでなく、血圧や血糖値のコントロール、禁煙や運動など包括的な生活習慣の改善を介した予防が大切である。

今、コレステロールの摂取量について、全く気にするなみたいなDrがいるかもしれません。
それは食事中のコレステロール量と血中コレステロール量の関連、LDLと心臓の冠動脈閉塞イベントとの関連の話に基づくのだと思いますが、冠動脈の内径は3~8mm、網膜血管の内径は0.1mm以下です。
細い血管ほど、簡単に閉塞し易いと思いませんか?
冠動脈が閉塞しなければ、全身の血管は問題無いとは言えません。
心筋梗塞後の患者さんを眼底検査すると、古い網膜静脈閉塞症を何本も認めることがよくあります。
食事の仕方を変えたことによって、LDLが上がってきたのであれば、それは眼科として放置しては困ります。
逆に網膜血管閉塞を認めた場合、必ず血圧、血糖、高LDLの精査のために内科受診を勧めています。
血管閉塞が起こらなくても、LDLが高いと胆石症のリスクも増えます。
家族性高コレステロール血症の人にLDLアフェレーシスをしても意味が無いなんて僕にはとても思えません。