アジサイ眼科


アジサイ眼科

Ajisai Ophthalmology Clinic

応招義務について厚生労働省医政局長より

以前にも記事にしましたが、医師法 応召義務について、
厚生労働省医政局長通知を都道府県に発出しました。


厚生労働省から正式な見解、解釈ということで、
他の医師にも知って頂きたく、内容を貼り付けます。




https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf
応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について
医政発 1225 第4号 令和元年 12 月 25 日 
各都道府県知事 殿 
厚生労働省医政局長


1 基本的考え方 
(1)診療の求めに対する医師個人の義務(応招義務)と医療機関の責務 医師法第 19 条第1項及び歯科医師法第 19 条第1項に規定する応招義務は、 医師又は歯科医師が国に対して負担する公法上の義務であり、医師又は歯科医 師の患者に対する私法上の義務ではないこと。  応招義務は、医師法第 19 条第 1 項及び歯科医師法第 19 条第 1 項において、 医師又は歯科医師が個人として負担する義務として規定されていること(医師 又は歯科医師が勤務医として医療機関に勤務する場合でも、応招義務を負うの は、個人としての医師又は歯科医師であること)。 他方、組織として医療機関が医師・歯科医師を雇用し患者からの診療の求め に対応する場合については、昭和 24 年通知にあるように、医師又は歯科医師 個人の応招義務とは別に、医療機関としても、患者からの診療の求めに応じて、 必要にして十分な治療を与えることが求められ、正当な理由なく診療を拒んで はならないこと。
(2)労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等について  労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等については、使用者と勤務医 の労働関係法令上の問題であり、医師法第 19 条第1項及び歯科医師法第 19 条 第1項に規定する応招義務の問題ではないこと。(勤務医が、医療機関の使用 者から労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等を受けた場合に、結果と して労働基準法等に違反することとなることを理由に医療機関に対して診療 等の労務提供を拒否したとしても、医師法第 19 条第1項及び歯科医師法第 19 条第1項に規定する応招義務違反にはあたらない。) 
(3)診療の求めに応じないことが正当化される場合の考え方 医療機関の対応としてどのような場合に患者を診療しないことが正当化さ れるか否か、また、医師・歯科医師個人の対応としてどのような場合に患者を 診療しないことが応招義務に反するか否かについて、最も重要な考慮要素は、 患者について緊急対応が必要であるか否か(病状の深刻度)であること。 このほか、医療機関相互の機能分化・連携や医療の高度化・専門化等による 医療提供体制の変化や勤務医の勤務環境への配慮の観点から、次に掲げる事項 も重要な考慮要素であること。   
・ 診療を求められたのが、診療時間(医療機関として診療を提供することが 予定されている時間)
・勤務時間(医師・歯科医師が医療機関において勤務医として診療を提供することが予定されている時間)内であるか、それとも 診療時間外・勤務時間外であるか   
・ 患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係
 
2 患者を診療しないことが正当化される事例の整理
(1)緊急対応が必要な場合と緊急対応が不要な場合の整理 1(3)の考え方を踏まえ、医療機関の対応として患者を診療しないことが 正当化されるか否か、また、医師・歯科医師個人の対応として患者を診療しな いことが応招義務に反するか否かについて、緊急対応が必要な場合(病状の深 刻な救急患者等)と緊急対応が不要な場合(病状の安定している患者等)に区分した上で整理すると、次のとおりであること。
① 緊急対応が必要な場合(病状の深刻な救急患者等)   
ア 診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内である場合      医療機関・医師・歯科医師の専門性・診察能力、当該状況下での医療提 供の可能性・設備状況、他の医療機関等による医療提供の可能性(医療の 代替可能性)を総合的に勘案しつつ、事実上診療が不可能といえる場合に のみ、診療しないことが正当化される。
イ 診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合      応急的に必要な処置をとることが望ましいが、原則、公法上・私法上の 責任に問われることはない(※)。 ※ 必要な処置をとった場合においても、医療設備が不十分なことが想 定されるため、求められる対応の程度は低い。(例えば、心肺蘇生法等の応急処置の実施等) ※ 診療所等の医療機関へ直接患者が来院した場合、必要な処置を行った上で、救急対応の可能な病院等の医療機関に対応を依頼するのが望 ましい。
② 緊急対応が不要な場合(病状の安定している患者等)    
ア 診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内である場合      
原則として、患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要がある。ただし、緊急対応の必要がある場合に比べて、正当化される場合は、医療機 関・医師・歯科医師の専門性・診察能力、当該状況下での医療提供の可能性・設備状況、他の医療機関等による医療提供の可能性(医療の代替可能性)のほか、患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係等も考慮して緩 やかに解釈される。    
イ 診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合      
即座に対応する必要はなく、診療しないことは正当化される。ただし、時間内の受診依頼、他の診察可能な医療機関の紹介等の対応をとることが望ましい。 


(2)個別事例ごとの整理 1(3)の考え方を踏まえ、医療機関の対応として患者を診療しないことが 正当化されるか否か、また、医師・歯科医師個人の対応として患者を診療しな いことが応招義務に反するか否かについて、具体的な事例を念頭に整理すると、 次のとおりであること。なお、次に掲げる場合であっても、緊急対応が必要な 場合については、2(1)①の整理により、緊急対応が不要かつ診療を求めら れたのが診療時間外・勤務時間外である場合については、2(1)②イの整理 による。


① 患者の迷惑行為
診療・療養等において生じた又は生じている迷惑行為の態様に照らし、診 療の基礎となる信頼関係が喪失している場合(※)には、新たな診療を行わないことが正当化される。
※ 診療内容そのものと関係ないクレーム等を繰り返し続ける等。


② 医療費不払い  
以前に医療費の不払いがあったとしても、そのことのみをもって診療しな いことは正当化されない。しかし、支払能力があるにもかかわらず悪意を持ってあえて支払わない場合等には、診療しないことが正当化される。具体的には、保険未加入等医療費の支払い能力が不確定であることのみをもって診療しないことは正当化されないが、医学的な治療を要さない自由診療において支払い能力を有さない患者を診療しないこと等は正当化される。また、特段の理由なく保険診療において自己負担分の未払いが重なっている場合には、悪意のある未払いであることが推定される場合もある。


 ③ 入院患者の退院や他の医療機関の紹介・転院等  
医学的に入院の継続が必要ない場合には、通院治療等で対応すれば足りるため、退院させることは正当化される。医療機関相互の機能分化・連携を踏まえ、地域全体で患者ごとに適正な医療を提供する観点から、病状に応じて 大学病院等の高度な医療機関から地域の医療機関を紹介、転院を依頼・実施すること等も原則として正当化される。


 ④ 差別的な取扱い  
患者の年齢、性別、人種・国籍、宗教等のみを理由に診療しないことは正当化されない。ただし、言語が通じない、宗教上の理由等により結果として 診療行為そのものが著しく困難であるといった事情が認められる場合には この限りではない。   このほか、特定の感染症へのり患等合理性の認められない理由のみに基づ き診療しないことは正当化されない。ただし、1類・2類感染症等、制度上、 特定の医療機関で対応すべきとされている感染症にり患している又はその疑いのある患者等についてはこの限りではない。


⑤ 訪日外国人観光客をはじめとした外国人患者への対応 
外国人患者についても、診療しないことの正当化事由は、日本人患者の場 合と同様に判断するのが原則である。外国人患者については、文化の違い(宗 教的な問題で肌を見せられない等)、言語の違い(意思疎通の問題)、(特 に外国人観光客について)本国に帰国することで医療を受けることが可能で あること等、日本人患者とは異なる点があるが、これらの点のみをもって診 療しないことは正当化されない。ただし、文化や言語の違い等により、結果 として診療行為そのものが著しく困難であるといった事情が認められる場 合にはこの限りではない。